投資には「王道」があります。それは、
自ら投資判断をし自らの責任で投資をすることです。
こうした“真の投資力”を身につけるためには
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「長く曲がりくねった道」を着実に進んで行くことが
唯一でかつ最も早い道程になります。
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≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー 日経平均の理論値を表す「基準相場」を直近(2025年10月)の状況を折り込んで再推計しました -
株式相場は2025年4月に突発したトランプ関税による急落後、6月から通常の相場変動とは異質とも言える急騰局面を演じたことで、足元では今後の先行きの相場を適正に見通すことが難しい状況にあると言えます。しかし、こうした局面でこそデータに基づく客観的な相場の評価が求められます。
当講座ではこうした要請にマッチする指標として、株式相場を形成する基本条件を意味するファンダメンタルズに見合う相場を日経平均に沿う、いわばあるべき日経平均の姿として「基準相場」を開発、公開しています。
当指標はその構造を毎年、3月決算企業の業績予想が出そろう6月に再推計し更新していますが、今回は近時の相場状況を考慮して異例処置として2025年10月まで4か月分の相場情報を追加して再度推計を行いました。
ファンダメンタルズの構成要素としては、まず第一に理論的裏付けを背景とした企業業績が挙げられますが、ここではさらに日本の株式相場の特性を鑑みて海外情勢の影響を強く受けること、および経営環境の急変に対する企業の抵抗力の強さを示す要素を折り込むこととしました。
これらの要素の日経平均に見合う具体的な指標として、各種の統計的検証を重ねた結果、以下の3つの指標を選定しました。
1. 企業業績=>日経平均ベースの予想1株当たり利益(以下、予想EPSと表記)。
2. 海外の情勢=>諸情勢を反映する為替相場の代表選手として米ドルレート。
3. 企業の基礎体力=>企業の解散という最悪のケースで株主の手元に残る根源的な価値として日経平均ベースの1株当たり純資産(以下、BPSと表記)。
これらの説明要因のデータが継続して得られる最古期である2002年5月から2025年10月までの期間を対象として推計した基準相場の決定式は以下の通りです。
基準相場=―7,803+21.49*【EPS】+131.7*【米ドルレート】+5.115*【BPS】
決定係数=0.945
ご参考までに通常の6月までの期間で推計された基準相場の決定式は以下の通りです。
基準相場=―6,783+22.36*【EPS】+123.9*【米ドルレート】+4.886*【BPS】
決定係数=0.950
推計の対象期間を6月以降の4か月を加えたことで各説明要因の影響度(係数)のうち、相場急騰の背景となった企業の基礎体力(BPS)の影響度が高まり、その分企業業績(EPS)の影響度がやや弱まった形になっています。海外情勢による影響度はほとんど変わっていません。
なお、上記の決定式に合わせて示されている決定係数は推計した基準相場が日経平均の変動をどの程度説明しているかを示す指標です。今回の10月までの期間で推計した式の説明力は94.5%で全体として基準相場は日経平均をよく説明しており、日経平均は基本的にファンダメンタルズに沿った健全な動きをしていると言えます。
以下の図は今回推計した新しい基準相場と日経平均の推移を示したグラフです。
日経平均と「基準相場」の推移(月次終値)
―2002年5月~2025年10月―

紺色の線が日経平均、赤線が今回再推計した基準相場です。この間に生じた相場の節目となる7個の事象および期初と直近についてその時期と日経平均、基準相場の値を白枠内に記しています。
7個の事象は、2003年4月の資産バブル崩壊の底値、2006年3月のITバブルのピーク、2009年2月のリーマン・ショックの底値、2012年2月のアベノミクス開始、2020年3月のコロナ・ショック、2022年9月のウクライナ侵攻の底値そして2025年4月のトランプ関税ショックです。注目の直近の2025年10月については特に枠を薄赤色でマークしています。(資産バブル崩壊については表記場所の関係で基準相場は割愛しました。)
これらの相場の節目ではやはりと言うか、日経平均は基準相場(ファンダメンタルズ)からそれなりにかい離していることが分かります。
下図はこうしたかい離の状況を、かい離率を「偏差値」(*)に規準化した指標で示したグラフです。
日経平均と基準相場のかい離率(偏差値に規準化)の推移
―2002年5月~2025年10月―

<偏差値>
「偏差値」は試験の成績評価などで一般的に用いられている指標で、平均値を中心として個別の成績がどの程度優秀か(あるいは悪いか)を一定の基準でわかり易く示します。具体的には平均を50点としてこの平均からの平均的なかい離(「標準偏差」と言います)を10点とします。したがって60点であれば平均から平均的なかい離分だけ上の位置、70点であれば平均的なかい離の2倍上の位置にあることになります。そして、偏差値が特によくつかわれる利点は、比較の対象が所定の分布をしていることを前提として中心から10点ごとに離れる場合を確率で示せるこためです。すなわち、平均値の50点を挟んで40点から60点の間に入る確率は67%、同様に30点から70点の間には95%、20点から80点では99.7%となります(何故こうした特性が成り立つかの解説は稿を改めてご案内します)。図では67%、95%、99.7%それぞれの境界を緑色、茶色、赤色の線で示しています。
さて、上の図からかい離率の偏差値が70点を超えるケースは、2006年4月のITバブル期が79.1、そして直近の2025年10月が75.1の2回です。これはいずれも発生確率が95%の外の上半分、すなわち2.5%以下になるということで、相場は極めて異例な状況、過熱状態にあると言えます。ただ、今回の10月の高値はITバブル時には届いておらず、逆に言うと過去の例からまだ相場上昇の余地があると見ることもできそうです。なお、コロナ・ショックからの回復期待による高値の2021年3月の値は68.2で過熱相場の寸前で留まっています。
一方、相場が上げ過ぎと同様に発生確率が2.5%以下となる下げ過ぎの状況となったのは、2003年5月の資産バブル崩壊時の23.0、2008年10月のリーマン・ショック時の23.7の2回です。2020年3月のコロナ・ショックと202年9月のウクライナ侵攻時の底値では異常な下げ過ぎの領域には至っていません。なお、トランプ関税ショック時の下げは45.9で通常の変動範囲に収まっており、表面的な衝撃の割には相場の実態は慌てるほどのことはなかったことが分かります。
ここで、上記の日経平均と基準相場とのかい離率での評価は相場の実感としては捉えにくいところがあるので、日経平均に合わせた実際の変動の限界に引き直して見てみましょう。
下図は日経平均と、かい離率から変換した日経平均の上限と下限の水準を併せて示したグラフです。
日経平均と基準相場および日経平均の上限、下限の推移
-2002年5月~2025年10月―

紺色の線が日経平均、青線が基準相場、茶色の線が95%の上限・下限の境界線で赤線が99.7%上限・下限の境界線です。
図から、日経平均が99.7%の超上限といえる水準を越したのはITバブルのピーク時で明らかにバブル状態にあったと言えます。一方、直近の10月時点では上限の95%に対応する5万12円は超えているもの、超上限の99.7%に相当する5万4,650円には差があり、完全なバブル状態には至ってないと言えます。
先行きの見通しとしては通常の上限(?)は超えていることで反落の可能性が高いことは確かですが、過去により極端な上限超えがあったということで現時点ではすぐ反落に向かうのかは見極めが困難な状況と言えます。
(ご注意)当図では日経平均が高値あるいは底値となる時期について日経平均と当該の上限あるいは下限の値を記していますが、上のかい離率グラフではかい離率のピークとボトムの時期を取り上げているため該当する時期が若干ずれる場合があります。なお、トランプ関税ショックについては下限には程遠い位置にありますが近時の注目事象ということでその時期のみ記しています。
(*)2025年11月10日以降の基準相場については今回の2025年10月までの期間を対象として再推計した指標を使用します。
*当講座についてのご意見、ご質問等ございましたら以下までご一報いただければ幸いです。
higurashi@iisbcam.co.jp
(*)ご注意
投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。
当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。
当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。
講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
