投資には「王道」があります。それは、
自ら投資判断をし自らの責任で投資をすることです。
こうした“真の投資力”を身につけるためには
便利で簡単な近道はありません。
「長く曲がりくねった道」を着実に進んで行くことが
唯一でかつ最も早い道程になります。
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≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー 株式相場がファンダメンタルズで説明される範囲に収まる業績の条件は・・・(試算その2) -
日経平均は直近の3日間(5月14、15、18日)で2,457円下げ、一方でファンダメンタルズに見合う「基準相場」は堅調に1,169円上昇したことで両者は接近、すなわち株式相場がファンダメンタルズに回帰することで相場が水準とファンダメンタルズの両面から正常化に向かって踏み出した感がします。
そこで、今回はこうした相場正常化への道筋をファンダメンタルズを決定する主要要因である企業業績の動きに的を絞ってどのように達成できるのかを前回講座での試算をベースに検証します。直近の両者の接近の動きを折り込むことでより明快な結論に達しました。
下図は前回講座で見た日経平均と「基準相場」および通常変動の上側・下側そして相場がファンダメンタルズとギリギリのつながりを保つ相場変動の上限と下限のグラフのうち、今回のテーマに沿って上方向の境界に絞り直近の5月18日まで推移を延長したグラフです。
日経平均と「基準相場」および通常変動の上側と上げ過ぎ限界の推移
―2025年1月6日~2026年5月18日―

紺色の線が日経平均、青線が「基準相場」で緑線が相場が正常な範囲に収まることを示す上側の境界、赤線がこれ以上の上昇は通常の相場状況を逸脱して異常な高値の領域に入る高値の上限を示します。現状では日経平均は高値の上限を4,647円、8%上回っています。白枠内は直近の5月18日の各指標の値です。
ここで、「基準相場」が堅調に上昇しているのはファンダメンタルズの主要因である業績(予想1株当たり利益:予想EPS)と1株当たり純資産(BPS)が上昇基調を維持しているためです。ちなみにもう一つの基準相場の決定要因である米ドルはこの間にほぼ横ばいで推移し、「基準相場」の動きに影響を与えていません。
下の図は予想EPSとBPSの推移を示したグラフです。
予想1株当たり利益(予想EPS)と1株当たり純資産(BPS)の推移
―2025年1月6日~2026年5月18日―

赤線が予想EPS、茶色の線がBPSです。両指標は今年の2月から4月にかけて調整模様となった以外、順調な上昇基調を辿っています。なお、前回講座で述べたように両者は基本的に連動する性質を持ちますが、直近時点で予想EPSの増加に関わらずBPSが若干低下しチグハグな状態となっているのは5月の決算発表と合わせて予想EPSが今期の増益見通しを折り込んで上昇した一方、BPSが前期の配当の支払いによる目減りを反映したためです。
こうした対象期の予想ベースと実績ベースの差による行き違いはありますが、両指標は全体として連動性が強いことは図から明らかです。ちなみに両者の相関度を示す相関係数は0.956です。
さて、株価は将来の企業の価値を折り込むとされます。そこで、現在の相場は実は市場が今後の企業業績の上昇によって高まった企業の価値を正しく評価して形成した正当な水準である、という(好ましい)想定が成り立つような増益の状況を探ります。
ここで、具体的な増益の規模は、本来のというか理論的に規定される日経平均の水準を決定する「基準相場」の構造(決定式)がベースになります。「基準相場」の決定式は次の通りです。
基準相場=―7,803+21.49*予想EPS+131.7*米ドル+5.115*BPS
なお、以下の試算において上述の各要因の特性からBPSは予想EPSと同じペースで変動するものとし、米ドルについては今後とも横ばいで推移し「基準相場」とそれに基づいて決まる通常変動の上側、上げ過ぎの限界値には影響を与えないものとします。
下の表は直近の各指標の実績と各ケースの増益幅に対応する相場の理論値、およびそれぞれのケースにおける日経平均との差額をまとめた一覧表です。
フル項目を揃えた上段について、左から順に白枠が各指標名、赤色の枠が直近の5月18日の各指標の実績、次の2つの白枠が各指標の基準相場に与える影響度を示す係数と基準相場に実際に与える影響度となる各指標の実績と係数を掛けた値、そして青色の枠が今回想定した3通りの増益率に対応する各ケースごとのそれぞれの算出結果(理論値)です。ここで、各ケースにおいて切片部分と米ドルの影響度は各ケースで一定となっています。
そして、下段の青色の枠に各ケースに対応する基準相場と通常変動の上側、上げ過ぎ限界値の各ケースに対応する理論値を記し、各ケースごとに直近の日経平均である6万815円に近い位置にある枠を薄赤色で示しています。最下段の白枠はこれらの薄赤色で記したターゲットの値と日経平均との差額を示しています。
表から、今後の企業業績が12 %の増益を実現すると上げ過ぎ限界の理論値が6万974円となり、直近の日経平均との差額は158円と近く、相場はファンダメンタルズで説明できるギリギリの関係を保つことになります。
これが27%の増益達成となると、通常変動の上側が6万771円となることで日経平均との差は44円でほぼ一致します。すなわち相場は通常変動の上側の境界に位置することになり、相場は正常化の範囲に入ることになります。\
そして、参考までに日経平均が本来のあるべき水準である「基準相場」に到達す増益率を求めたところ46%の増益となりました。この水準は現状の延長線上では達成できそうもないレベルで、相場がファンダメンタルズに見合う完全な安定水準に一気に至るのは無理なようです。
しかし、12%の増益は現在の業績環境から充分可能性がありそうで、さらに27%の増益はややキツ目ではありますが、全く不可能な状況とは言えません。そして足元で見られるように、一方で相場が緩やかに調整模様を辿るならば求められる増益の幅はそれだけ下がることになり実現の可能性はさらに高まります。27%増益の場合は相場は正常な状態の一角に位置することになります。
現在の相場はファンダメンタルズに対して上振れ状態にあることは事実ですが、正常化が見通せない状況ではなく、この先の業績改善を期待しつつ正常化への道を徐々に、しかし着実に進んで行くと見ることができそうです。
*当講座でご案内している「基準相場」は上記の『資産運用のブティック街』のトップページにある無料の「相場の実相見る」コーナーで「日経平均と基準相場の推移」として毎日更新、公開しています。
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同表では日経平均と「基準相場」を、短期として約6か月、長期として約3年間を対象に両指標を併せたグラフとしてご覧いただけます。
相場の根っこにある”ファンダメンタルズの実態”と実際の株式相場とを対比することで相場の”実相”を的確に捉える指標としてご活用いただければ幸いです。
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当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。
講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

