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NEW ポートフォリオ戦略実践講座:「近似の円ドル相場の変動特性を統計的知見に基づいて検証し今後の相場展望と投資スタンスを示す」 (2025/2/3公開)

<応用編・講座>
「ポートフォリオ戦略実践講座」

ー 近似の円ドル相場の変動特性を統計的知見に基づいて検証し今後の相場展望と投資スタンスを示す -

 以下で近時の円ドル相場の動向を統計的知見に基づいて検証し足元の相場状況を客観的に把握することよって、適正な投資スタンスを示します。
 この統計的検証を行う基本的な立場は、「何事も行き過ぎた状況は修正される」という自然界の摂理を相場の動向に当てはめることを出発点とします。すなわち、相場が上げ過ぎた場合には反落、あるいは下げ過ぎた場合には反騰しますが、これは自然界で見られる「行き過ぎた状態からの修正」と同じ現象とみなします。
 ただし、このように自然界の原理を相場の評価に適用するためには以下の2つの条件を前提とします。

【条件1】これは自然界においても同様ですが、相場は本来の“あるべき水準”を持っており、一時的にこの水準からかい離してもいずれこの水準に戻るものとします。ここではこの水準は、一定期間の相場構造は安定しているものとして、対象期間の平均値で得られるものとします。

【条件2】相場はこの“あるべき水準”を中心として、ここに近いほど発生頻度が高く、ここから離れるに従って左右対称に頻度が下がるものとします。この条件は、対象期間おいて相場が周知の“正規分布”に従うこととなります。

以下は【条件2】についての補足です。
【2.1】なぜ円ドル相場の変動を正規分布に見立てることが出来るのか。
正規分布は、ある天体の位置を観察する際などに、急に生じる気圧や空気の流れの変化など事前に予見できない様々なかく乱要因によって観察値が真の値を中心にバラツク場合に形成されます。
この意味で、円ドル相場も相対国との金利差や投機筋の動きに対する思惑、また、時には当局の介入などあらかじめ想定できない様々な不確定要因によって(ファンダメンタルズによって規定される)本来のあるべき水準を中心としてバラツクことから、本質的に正規分布的な性質を持ち、結果的に正規分布に近い変動をすると考えられます。

【2.2】なぜ正規分布で評価するのか。
正規分布においては、事象の発生頻度が中心からのかい離の平均である標準偏差の範囲内に全体の68%、標準偏差の2倍の範囲には95%が含まれます。
すなわち、相場が標準偏差内に入っていればこれは全体のほぼ3分の2に相当することで、通常の変動状態にあると見なすことが自然です。一方、標準偏差の2倍の範囲から片側に外れる確率は5%の半分で2.5%となり、これは100日間で2~3回発生する滅多に生じないケースであり、こうした相場状況は通常ではない異常な行き過ぎの状態と判断することができます。
このように正規分布は標準偏差を物差しとして相場の状況を効率的かつ簡明に示す特性を持ちます。

下図は、こうした正規分布の特性を明快に示すよう、中央をゼロ、標準偏差を1とした正規分布の図です。こうした正規分布を “標準正規分布”と呼びます。

                  「標準正規分布」のグラフ
   

図から、マイナス1からプラス1までの標準偏差の範囲に全体の68%が、マイナス2からプラス2までの標準偏差の2倍の間に95%が含まれ、そこから左右それぞれに外れた部分が2.5%であることが一目瞭然で分かります。

ただし、こうした正規分布に基づく相場状況の評価が成り立つためには、言うまでもなく対象とする期間における相場が正規分布に従うことが前提となります。この前提は無論いつでも成り立つわけではません。
そこで、まず、相場が正規分布にふさわしい変動をする期間を選定しますが、その際、今回の講座の目的は近時の円ドル相場の動向を検証することで足元で採るべき投資スタンスを示すことですから、検証は日次ベースで近時の相場状況をきめ細かく評価した上で、なるべく普遍的な相場構造を反映するべくできるだけ幅広い相場変動の実態を含む期間がふさわしいことになります。
これらを勘案して次の3通りの期間を候補とします。すなわち、(1)コロナ・パンデミックを含む2020年以降の5年間(2)ロシアのウクライナ侵攻を含む2022年以降の3年間(3)近時の状勢を詳しく映す直近の2024年の1年間──を取り上げます。
以下で、それぞれの期間の相場動向の評価と併せて正規分布に沿うかどうかの判定を行い、正規分布の条件に適合した期間についての詳細な検証を基に適切な投資スタンスを示します。


1.2020年以降の5年間の検証
 下図は2020年初から直近の2024年までの5年間の日次円ドル相場の推移を示すグラフです。

               直近5年間の日次円ドル相場の推移
              ─2020年1月6日~2024年12月30日─

   
                出所:日本銀行/以下、円ドル相場の出所は全て日本銀行。

 この5年間の円ドル相場の平均値は128円13銭、そして相場の平均値からの平均的かい離を示す「標準偏差」は18円48銭です。図中の緑色の横線が平均値、その上下にある2本の青線が平均値から標準偏差だけ離れた位置、同じく赤線は標準偏差の2倍離れた位置を示します(以下の図を含め標準偏差は英文の“Standard Deviation”を略記して “SD”と記します)。
 この間の円ドル相場の推移を見ると、相場は2022年のロシアのウクライナ侵攻を機に一段シフトアップしており、相場の構造が変わったように見受けられます。しかし、どのように変わったのか、時系列グラフからはその内容は読み取れません。
 そこで、その実態を明らかにするのに有効なのが、この間の円ドル相場の推移をもとに得た以下のヒストグラムの図です。

             2020年以降の日次円ドル相場のヒストグラム
              ─2020年1月6日~2024年12月30日─

   

 図で、平均値の128円13銭は中央の緑色の縦線で、平均値から標準偏差だけ離れた位置である146円57銭と109円69銭は青線で示しています。
 図から、この間の日次の円ドル相場は、130円近辺を境に前半と後半で二つの分布を形成していることが分かります。130円はロシアのウクライナ侵攻時の水準に相当することから、ウクライナ侵攻を機に相場の構造が2つに別れたことが示されています。
 ここでの統計上の特性に基づく検証は上述の通り、2つの分布を同時に扱うことはしません。この5年間の相場はここでの検証の対象外になります。
 次にロシアのウクライナ侵攻後の相場動向に焦点を絞り、2022年以降の3年間を対象とした相場評価を行います。


2.2022年以降の3年間の検証
 下図は2022年初から2024年までの3年間の日次円ドル相場の推移を示すグラフです。

              直近3年間の日次円ドル相場の推移
             ─2022年1月4日~2024年12月30日─

   



 この間の円ドル相場の平均は141円25銭、標準偏差は11円25銭で、平均の位置、平均から標準偏差だけ離れた位置、そして標準偏差の2倍離れた位置を、それぞれ上の図と同じく緑線と青線、赤線で示しています。
 図から、この間の相場はトレンドとして右肩上がりで、時とともにドル高に向かう傾向が見てとれます。こうした相場変動の実態示すのが以下のヒストグラムです。

             2022年以降の日次円ドル相場のヒストグラム
              ─2022年1月4日~2024年12月30日─

   

 ここでも、平均値は緑、平均から標準偏差分離れた位置は青、標準偏差の2倍離れた位置は赤線でそれぞれ示しています。
 図から、平均値は分布の中央よりかなり右側(ドル高方向)に偏っており、これは、“本来のあるべき水準”がその間の平均値で示され、また、このあるべき水準の近辺における相場の頻度が最も高くなるという上記の統計的検証の条件に合いません。2022年初からの3年間もここでの統計的検証には不適格になります。
 そこで3番目の候補の、直近1年間の2024年の相場について相場評価を行います。


3.2024年1年間の円ドル相場の検証
 下図は2024年の日次円ドル相場の推移を示すグラフです。

               2024年の日次円ドル相場の推移
             ─2024年1月6日~2024年12月30日─

   


 図の緑線、青線、赤線はこれまでと同様、平均と平均からの標準偏差、標準偏差の2倍の位置を示します。直近1年間のドル相場の平均は151円台と一段と上昇する半面、標準偏差が4円台と大きく低下しています。図では相場は荒っぽい変動を見せていますが、これは標準偏差が小さくなったことで物差し自体が縮んでいるため、変動が拡大されて見えることによります。
 実際には相場は平均値からのかい離は大幅に小さい変動となっており、相場は平均値近辺に集中した変動となっています。
 こうした相場の状況を明確に表すのが以下のヒストグラムです。

               2024年の日次円ドル相場のヒストグラム
               ─2024年1月4日~2024年12月30日─
 
   

 図から、相場の分布形は正規分布に近いと見ることができます。ちなみに、この2024年1年間(245営業日)で、平均値から標準偏差内となる146円から151円の間に入る相場の数をカウントすると、157個となり、確率は64.08%で、これは正規分布における確率の68%に近い値となっています。また、相場が平均値から標準偏差の2倍の範囲を外れる場合、すなわち161円を上回る、または141円を下回るケースは、ともに4個でその確率は1.63%。これは正規分布における確率の2.5%を若干下回るものの、ほぼ正規分布の特性に沿う結果となっています。

 これらの結果から2024年の日次の相場変動は正規分布に近い分布になっていると言えそうです。
 そこで、当面この相場特性が維持されるものとすると、統計的知見に則った相場評価、そして、それに基づく投資スタンスは次のようになります。


すなわち、
「円ドル相場は151円をはさんで156円台から146円台の間であれば通常変動の範囲とみなして静観し、161円を上回るドル高(円安)状態、または141円を下回るドル安(円高)の状況は行き過ぎであり、反転する可能性が強く市場に参加する準備態勢を執る。その際、161円台からの反落後に相場が一段落する位置は通常変動の上側の境となる156円程度、141円台からの反騰後の位置は同じく通常変動の下側の境である146円程度となる。そして、その後、相場は当面、146円台から156円台の間で安定的な変動が続く。」


以上です。



*ご注意:
投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。
当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。
当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。



講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

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