投資には「王道」があります。それは、
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ー 順調な経済成長のわりに景気がスカッと明るく感じられないのは何故? 対応は・・ -
〇失われた30年を抜け出たか日本経済
下の図は国内の生産活動の規模を表す国内総生産(GDP)と海外での稼ぎも含めた日本全体の所得の総額を表す国民総所得(GNI)について、1994年度から2025年度までの推移を示したグラフです。
GDPは日本経済の活性度、力強さを表し、GNIは国民生活の豊かさの裏付けとなる所得の規模を示す指標と言えます。
紺色の線がGDP、赤線がGNIです。期初の1994年度と直近の2025年度と合わせてGDP、GNIとも下落した2008年度のリーマン・ショックと2020年度のコロナ・ショックにおける両指標の値を上段の白枠内に記しています。
縦線は相場の節目であるリーマン・ショックの底値と低迷から抜けるきっかけとなったアベノミクス開始期そしてコロナ・ショックの時点です。また、期初からリーマン・ショックとコロナ・ショックまでの期間、およびコロナ・ショックから直近までそれぞれのGDPとGNIの変化率を矢印と合わせて示しています。
図から、2008年度のリーマン・ショックによる経済への打撃はやはり大きかったことが確認できます。
期初の1994年度から緩やかながら上昇を続けたGDPとGNIが2009年度のリーマン・ショックの急落によって15年間の伸び率がGDPは4.0%、GNIは2.3%のマイナスになっています。日本経済はその後5年間低迷が続いた後、アベノミクスによって息を吹き返しましたが2020年度のコロナ・ショックによって再びマイナスを記録、結果として期初から2020年度までの26年間でGDPは6.2%、GNIは9.1%の成長に止まっています。年平均ではそれぞれ0.23%と0.35%で、これは文字通り“ゼロ成長”と言えます。
しかし、コロナ・ショックから直近の2025年度までの5年間は相場の様相が変わります。この間の成長率はGDPが21.2%、GNIは24.2%で、年平均ではそれぞれ4.2%、4.8%です。この5年間の日本経済は “失われた30年”から抜け出たようにも見えます。
しかし、一般の景気に対する感触は、この近時のマクロベースの経済成長とは裏腹にスッキリとした明るさが依然として感じられないというのが実情です。
〇景気の良し悪しを実感するカギは家計消費の活発さ
景気がいいと実感するための要件は個人の消費が十分に活発であることと考えられます。家計消費はGDPの約半分を占める日本経済の最大の構成項目で経済の動向を左右するだけでなく、経済の質、つまり生活水準そのものの反映であることで景気の善し悪しの感覚に直結する要素でもあります。また家計消費は一定の生活水準を維持し保障する意味で変動が少なく、特に下方硬直性が強いことが特徴です。
下の図は1994年度から2025年度までのGDPと家計消費の推移、および家計消費のGDPに対する構成比を示すグラフです。
GDP、家計消費と家計消費構成比の推移
―1994年度~2025年度―

上段の青線がGDP、赤線が家計消費で左目盛、下段の茶色の線が構成比で右目盛です。
家計消費が安定的、言い換えると経済全体の変動に柔軟に対応しない(できない)ことが図の構成比で示されています。構成比は基本的に50%強の水準で推移していますが、リーマン・ショック時に例外的に55%程度に高まっています。これは経済全体が低迷する中で、家計消費は必要な分は支出せざるを得ないことで下がることはなく(できず)、相対的に家計消費の比率が高まったためです。
こうした家計消費の裏にある切実な実態を鮮明に示すのが以下の貯蓄率の推移です。
〇近時は家計で貯蓄ができない
下の図は家計消費と家計で自由に処分できる可処分所得、および可処分所得から消費分を差し引いた残りである貯蓄と可処分所得との比率である貯蓄率を併せて示したグラフです
家計消費、可処分所得と貯蓄率の推移
―1994年度~2025年度―

上段の青色の線が可処分所得、赤線が家計消費で左目盛、下段の緑線が貯蓄率で右目盛です。
上段の白枠内は可処分所得と家計消費、貯蓄率の1994年度と2025年度の実数およびこの間の伸び率を記しています。縦線は貯蓄率が急低下した2001年度と、リーマン・ショックとアベノミクスの開始期、およびコロナ対策として国民1人当たり10万円を給付した2020年度の時点を示します。
図から期初の1994年度から直近の2025年度までの家計消費の伸びは28.6%と上のGDPの伸びとほぼ等しくなっています。一見、家計消費は総合的な所得の規模を表すGNIの伸び率である35.6%に見合うべきと思われますが、GNIの高い伸びは企業の海外直接投資の結果であり、その成果は企業に属し、かつ企業は海外で得た収益は国内に還流させずそのまま投資等の海外での活動資金として活用する傾向が強いため個人の所得増には結びつかないことによります。
期初の1994年度には可処分所得は家計消費を30兆円余り上回っており、貯蓄率は12%と家計に余裕があったことがうかがわれます。その後も高位を維持してきましたが、2000年度を境に低迷期に入る一方家計消費は堅調に上昇過程を辿った結果貯蓄率は急速に低下、2013年度にはとうとうマイナスとなりました。その後も貯蓄率は2020年度を例外としてゼロ%近辺を推移しており、使える所得は全て消費するという厳しい状況が続いたことが分かります。
これではマクロ経済が順調に伸びているぞ、と言われても家計としては”それはどこの話し?”と言いたくもなりそうです。なお、2001年度に貯蓄率が急低下した要因は団塊の世代が定年に差し掛かることが有力な要因のひとつに挙げられます。これも少子高齢化による経済力の減衰傾向を示す一つの象徴とも言えそうです。
ついでながら、2020年度に行った国民すべてに10万円の給付を行った施策は、可処分所得は確かに上昇した一方で家計消費は先行き不安の高まりからむしろ低下したため、貯蓄率が一時的に上昇しただけで財政の負担を一段と重くした結果となっています(為政者の判断は適切であってほしいものです)。
〇モヤモヤ感を抜け出て景気がどんどんよくなる好循環に入る道は・・・
以下の図はこうした家計消費と経済全体、そしてその裏にある影の主役と言ってもよい可処分所得が実際にどのように推移してきたかを示すグラフです。GDPと家計消費、可処分所得の推移を1994年度を100とした指数で表しています。
GDPと家計消費、可処分所得の推移(1994年度=100)
―1994年度~2025年度ー

紺色の線がGDP、赤線が家計消費で青線が可処分所得です。
図で、経済全般の動きを示すGDPがリーマン・ショックの落ち込みから回復、コロナ・ショック以降の急上昇と最も活発な動きを見せています。そして家計消費はその安定的な動きをするという特性からGDPの変動をやや緩やかに追う形で動いています。そして結果的に期初からの増加率はGDPと同じ28.8%になっています。
一方で可処分所得は2001年度からの低迷が続き、コロナ・ショック以降の回復も力強さに欠けたことから2025年度の水準は期初から14.7%の増加に止まりました。
さて、景気の明るさが一般に感じられる確かな筋道は家計消費が活発になることです。そして、その前提として家計に充分な所得が入ることが必要です。一方、企業の収益はアベノミクス以降堅調に推移し、特に内部留保は順調に拡大しています。
無論、こうした優れた企業体質を作り上げてきたのは企業自身の的確な経営政策とそれを実現するための懸命な奮闘があってこそですから絶対に不本意な形でこれを毀損してはなりません。が、企業から個人への所得配分を増やすことが実現すれば一般に景気が良くなったと実感する決め手となる可能性が高そうです。
景気がよくなったと実感すれば経済の最大項目である消費が上向き、それが企業収益を筆頭に経済全体を押し上げることでさらに景気がよくなるという好循環に入ることを期待したいものです。
*当講座でご案内している「基準相場」は上記の『資産運用のブティック街』のトップページにある無料の「相場の実相見る」コーナーで「日経平均と基準相場の推移」として毎日更新、公開しています。
同表では日経平均と「基準相場」を、短期として約6か月、長期として約3年間を対象に両指標を併せたグラフとしてご覧いただけます。
相場の根っこにある”ファンダメンタルズの実態”と実際の株式相場とを対比することで相場の”実相”を的確に捉える指標としてご活用いただければ幸いです。
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(*)ご注意
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当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。
当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。
講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

