「理論株価」とは

株式相場は無数とも言える様々な要因で変動します。
しかし、相場の動きをできるだけ正確に捉えようとしてこれら様々な要因をあれもこれも取り上げて相場変動を説明しようとすると、目移りしてかえって本筋を見失い迷い道に入ってしまうことになります。
そこで、相場に影響を与える最も基本的な要因として業績に的に絞って着目します。業績としては予想ベースの最終利益(当期利益)で捉えることとします。
ここで、日本株の相場は日経平均で示されるものとすると、相場を説明する要因は日経平均ベースの予想1株当たり当期利益(以下、予想EPS)(*)となります。
(*)日経平均ベースの予想1株当たり利益の求め方については最下段にある解説をご参照ください。


下図は日経平均と予想EPSの推移を、予想EPSが連続して求められる最古期である2002年5月から2019年6月について月次終値ベースで示したグラフです。

日経平均と予想1株当り利益(予想EPS)の推移(月末値)
      ―2002.5~2019.6―

予想EPS2019


日経平均は青線で左目盛、予想EPSは赤線、右目盛で示しています。
全体としてみると予想EPSは日経平均とよく連動しており、業績が日経平均の有力な説明要因であることが分かります。
しかし、2008年9月のリーマン・ショック以降、2012年11月の衆議院解散までの期間は業績が回復しているにも関わらず急激な円高によって日経平均は低迷を続け両者は大きくかい離しました。予想EPSの相場説明力は大幅に低下しています。
ここで、この時期の両者のかい離を埋める要因として為替の動きを取り入れます。為替は円の対米ドルレートで捉えます。
下図は日経平均と米ドルレートを上と同じ期間について示したものです。


      日経平均と米ドルレートの推移(月末値)
     ―2002.5~2019.6―

米ドルレート2019


日経平均は青線で左目盛、米ドルレートは赤線、右目盛で示しています。
図から、前半は米ドルレートと日経平均は必ずしも連動していませんが2006年半ば、米国の不動産バブルがピークに達したころから連動性が高まり、リーマン・ショック後も高い連動性が維持していることが分かります。

これは株式相場の基調が2006年までは業績相場の面が強く、以降は為替を含む金融相場の色彩が濃くなったことを示しています。
この意味で、ここでの予想EPSと米ドルレートで株式相場を捉える構造を業績相場と金融相場の両面を最小限の説明要因で説明する形と言えます。

この構造から衆議院の解散以降のアベノミクスの急騰をみると、一気に進んだ円安を背景に金融相場の面からの上昇に加え、それまで息をひそめていた業績相場が更なる業績改善期待によって重なり、両者が相まって力強い上昇につながったことになります。

さて、こうした構造を実際の投資の場に適応するには具体的な形として取り出さなければなりません。
そこで、統計学の回帰分析という道具を使って実際の関係式として捉えます。
詳細は省きますが、これは過去の一定の期間における実際のデータに基づいて所定の構造を最もうまく(誤差が少なく)表す式を推計するものです。
推計の期間は上述の2002年5月から2019年6月です。これは期間をいろいろ変えて推計を試みた結果、期間を長くすることで安定した結果が得られるという事実から、予想EPSが連続して得られる最長の期間を採用したものです。

こうして得られた推計式をもとに算出される結果が、所定の構造に則って求められる値ということでこれを”理論株価”と呼びます。
推計の結果は以下の通りです。


日経平均の理論値(理論株価)=―3、819.36+70.87*【予想EPS】+106.19*【米ドルレート】

この式は業績が改善、あるいは米ドルが高まる(円安になる)場合にそれぞれ1円ごとに日経平均が70円と106円上昇することを示します。この式にそれぞれの時点の予想EPSと米ドルレートをセットするとその時点の「日経平均会社」の本来の株価、すなわち、理論株価が求まります。
下図は上述の推計期間について得た理論株価と日経平均を併せて示したグラフです。

         推計期間における日経平均と理論株価の推移(月末値)
           ―2002.5~2019.6―

理論株価2019新B


青線が日経平均、紫線(点線)が理論値を示します。リーマン・ショックによる急落とその後の相場低迷期、2012年11月の衆議院解散を機としたアベノミクスの上昇、そして2015年5月の上昇相場の一服と底打ち後の再上昇といった各局面で理論値が日経平均の動きをきれいに追っており、予想EPSと米ドルレートがお互いに説明力が落ちる局面を補い合うことよって日経平均の変動が良く説明されることが分かります。ちなみに、理論値は日経平均の変動の90.4%を説明します。

(*)日経平均ベースの予想1株当り利益(予想EPS)

日経平均ベースの予想EPSは次の株価収益率(PER)の定義式をもとに、以下のように求めます。

PER=株価/1株当たり利益(EPS)

この式を組み替えると、

1株当たり利益(EPS)=株価/PER

ここで、株価に日経平均、PERに日経平均の予想PERを当てはめれば、以下のように日経平均の予想EPSが求まります。


日経平均の予想EPS=日経平均/日経平均の予想PER

ただし、日経平均は権利落ちによる株価の変動分を“除数”という係数によって修正していますので、逆に除数の逆数に相当する“倍率”で割り戻すことによって日経平均の予想EPSを求めることができます。
これらの関係から結果として以下の式で日経平均ベースの予想EPSが求まります。


日経平均の予想EPS=日経平均/日経平均の予想PER/倍率

ちなみに2019年6月末(28日)の日経平均は2万1,275円92銭、予想PERは11.92、倍率は8.261ですのでこれらを当てはめると予想EPSは以下のように201円62銭となます。


予想EPS=2万1,275円92銭/11.92倍/8.261=216円06銭

*日経平均の予想PERと倍率は日本経済新聞に毎日掲載されます。

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