足許の株式相場はファンダメンタルズが許容する範囲を大幅に超える
日経平均は2026年4月27日に終値で初の6万円台を記録、直近の5月8日終値は6万2,713円と最高値圏を維持しています。
下図は日経平均とファンダメンタルズに見合う日経平均の水準を示す「基準相場」について、日経平均と「基準相場」がほぼ見合ったレベルで相場の構造が安定していたと見られる2025年初から直近の2026年5月8日までの推移を示すグラフです。
日経平均と「基準相場」の推移(日次終値)
―2025年1月6日~2026年5月8日―

紺色の線が日経平均、青線が「基準基準」です。
「基準相場」は日経平均のファンダメンタルズを構成する要因として、(1)株価決定の基本要素である業績を示す予想1株当たり利益(予想EPS)、(2)相場に影響を与える海外の諸条件の変動を集約的に表す為替(米ドル)の水準、(3)企業の存続にかかわる危機時において生き残るための根源的な基礎体力を示す1株当たり純資産(BPS)――の3つの指標で推計して求めています。
*「基準相場」についての詳しい説明はこちらの「基準相場とは」をご参照ください。
実際の推計結果は以下の通りです。
基準相場=―7,803+21.49*予想EPS+131.7*米ドル+5.115*BPS
*基準相場は予想EPSが10円上昇すれば210円、米ドルが1円上昇すれば131円、BPSが10円上昇すれば51円それぞれ引き上げられることになります。
上図から日経平均は期初の2025年初の3万9,307円から直近時の6万2,713円まで1年4か月で2万3,400円余り59%の上昇、この間の底値であるトランプ・ショック時の3万1,136円からは1年と1か月で3万1,577円、実に2倍強になっています。
直近時における「基準相場」は4万4,640円で日経平均は1万8,000円余り40%上回っており、株式相場はファンダメンタルズでは説明のつかない上げ過ぎ状態にあると言っても過言ではありません。
相場が上げ過ぎ状態にあることは反落の可能性が高いことにつながりますが、実際にこうした状況に対処するためには反落の可能性がどの程度ひっ迫しているかを具体的に知る必要があります。そこで、当講座では日経平均と「基準相場」のかい離の程度を統計的に処理することで、現状が通常変動の範囲にあり問題のない状況であるのか、あるいは通常変動の限界を超えることで相場反転の瀬戸際にあるのかを数値で示す指標を開発しています。
*この指標についての解説は別の機会でご紹介する予定です。
下の図は日経平均と「基準相場」および上述の日経平均の通常変動の範囲と変動の限界を併せて示したグラフです。
日経平均と基準相場および通常変動の上側・下側と上限・下限の推移
―2025年1月6日~2026年5月8日―

紺色の線が日経平均、青線が「基準相場」で緑線が通常変動の範囲、赤色の線が通常変動の限界を示します。白枠の中には期初と直近における通常変動の上側と下側、および上限と下限の値を記しています。
現状では日経平均は通常変動の上側を約1万3,000円、26%上回り、変動の上限をも7,900円、14%上回っています。足元のこのままの相場状況はファンダメンタルズでは説明がつかない上げ過ぎ状態で反落の可能性は高いと言えます。
しかし、株価は将来の状況を折り込んで形成されます。そこで、足元の高過ぎるとされる相場状況は実は市場が先行きのファンダメンタルズの大幅な好転を先取りしている結果で、相場は妥当な水準であるという可能性を、状況変化を折り込んだ試算によって探ります。
下図は上の図と同じ期間におけるファンダメンタルズを構成する予想EPSとBPSの推移を示すグラフです。
予想1株当たり利益(予想EPS)と1株当たり純資産(BPS)の推移
―2025年1月6日~2026年5月8日―

赤色の線が予想EPSで青線がBPSです。予想EPSはこの間に80円99銭、24.3%の上昇、BPSは同じく806円、22.0%の上昇でした。
BPS(1株当たり純資産)はEPS(1株当たり利益)から配当等の流出分を除いた分が増分になるためEPSと基本的に良く連動していることが分かります。なお、この間の米ドルについては期初の157円70銭から直近の156円99銭まで若干の低下でほぼ横ばいとなっており、以下の試算でも今後とも横ばいで推移するものとして状況変化の対象外としています。
業績向上による相場状況の変化を試算
いま、足元の予想EPSは413円90銭ですがこの先25%の増益を見込むと増加額は103円50銭となります。同様にBPSもEPSと連動する形で直近のBPSの4,470円から25%増加するものとすると増加分は1,117円となります。
これらの増加額に上記の推計式におけるそれぞれの係数をかけるとEPSが2,224円、BPSが5,713円で併せて7,937円の増額となります。直近の変動の上限である5万4,795円にこの7,937円を加えると6万2,732円となり、これは直近の日経平均、6万2,713円とほぼ一致します。
市場がこの先日本株の業績が25%の増益を見込んでいるとした場合には相場は通常変動の上限、これ以上の上昇は反落につながるというギリギリの限界点に一致することになり、なんとかファンダメンタルズとのつながりが保たれることになります。
では、相場がこうした極限の状態ではなく安定的な状態とみなせる通常変動の範囲に収まる場合の業績の見込みはどのようなものになるでしょう。
各種の増益ケースを試みたところ、増益率を41%として上記と同様に通常変動の上側について試算すると1万3,021円の増額となり、現行の4万9,718円に加えると6万2,739円で直近の日経平均の6万2,713円とほぼ並びます。
この先、AIの画期的な進展等で増益基調が強まる可能性は高く、増益の規模が2割を超すレベルになることは充分ありそうです。ただ、4割はちょっと厳しそうですね。
相場はファンダメンタルズとつながるギリギリの高値状態
以上の試算から、現在の相場はファンダメンタルズと大幅にかい離した状況であることは事実ですが、先行き業績の増益を折り込むことで現実離れした上げ過ぎ状態で反落が必至の状況とは必ずしも言えません。
しかし、とは言え相場安定の状況とみなすための通常の相場変動からのかい離は大幅で、これに見合う増益の実現は厳しそうということで、相場はファンダメンタルズとつながるギリギリの高値近辺で推移していると見ることができそうです。
*当講座でご案内している「基準相場」は上記の『資産運用のブティック街』のトップページにある無料の「相場の実相見る」コーナーで「日経平均と基準相場の推移」として毎日更新、公開しています。
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同表では日経平均と「基準相場」を、短期として約6か月、長期として約3年間を対象に両指標を併せたグラフとしてご覧いただけます。
相場の根っこにある”ファンダメンタルズの実態”と実際の株式相場とを対比することで相場の”実相”を的確に捉える指標としてご活用いただければ幸いです。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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