直近の株式相場は反転調整含みの「リスクオン」状況  (2025/11/19公開)

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≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫

   ー 直近の株式相場は反転調整含みの「リスクオン」状況 -

 前回講座ではファンダメンタルズに基づく“あるべき日経平均”の姿を表す「基準相場」を今年7月から10月までの相場急騰の状況を折り込んで再推計しその結果をご紹介しました。今回はこの再推計の結果を基に直近時の相場情勢を日次ベースできめ細かく評価します。

〇ファンダメンタルズを大幅に上回る直近の株式相場
 下図は2025年初から直近の11月14日までの日経平均と基準相場の日次ベースの推移を示すグラフです。

               日経平均と基準相場の推移(日次終値)
              ―2025年1月6日~2025年11月14日―

   

 紺色の線が日経平均、赤線が基準相場です。期初の1月6日と直近の11月14日と併せトランプ・ショック直前の3月26日とショック直後の4月7日の底値、および10月31日の日経平均の史上最高値について日経平均と基準相場の値を枠内に記しています。
 図から、年初からトランプ・ショック直前の3月26日まで日経平均は基準相場に沿った安定した相場形成が続いていましたが、トランプ・ショックによって日経平均は一気に6,891円下落、これによってあるべき日経平均の水準である基準相場を大きく(5,868円)下回りました。
 市場はこの急落はさすがに行き過ぎと見たか、相場は直後に底打ちし5月初めには基準相場(ファンダメンタルズ)まで回復、その後2か月程はほぼファンダメンタルズに沿った穏当な相場状況が続きました。そして、7月から相場は異例の上昇局面に入りました。
 日経平均は6月末の4万487円から10月31日の最高値の5万2,411円まで4か月間で1万1,900円余り、3割近い上昇となり、基準相場との格差も1万1,000円以上となりました。
 この急騰相場について、「相場はこんなものではない、まだまだイケる」という強気の声がある半面、「相場は行き過ぎで調整は避けられない」といった慎重な声も徐々に高まっているようです。こうした声が交差する中で、視点を長期的な相場の推移に切り替えて足許の相場を見てみます。長期の相場の流れの中でもやはり上げ過ぎと評価されるならば、相場は確かに反転のリスクが高まっていると見ることができそうです。

〇歴史的波乱を踏まえた長期の株式相場の流れの中で見る相場の位置づけ
 下の図は前回の講座でご案内した2002年5月から2025年10月までの月次終値ベースの日経平均と基準相場の推移に、直近の11月14日の終値を追加して示したグラフです。

               長期の日経平均と基準相場の推移(月次終値)
                ―2002年5月~2025年11月(14日)―

   

 紺色の線が日経平均、赤線が基準相場です。期初と直近に併せてこの間に生じた大きな相場事件の節目である2003年4月の資産バブル崩壊の底値、2007年6月のITバブルのピーク、2009年2月のリーマン・ショックの底値、2020年3月のコロナ・ショックと2022年9月のロシアによるウクライナ侵攻時の底値、そして2025年10月31日の日経平均の最高値について日経平均と基準相場の値を枠内に示しています。
 図から、日経平均はそれぞれの節目において基準相場からそれなりにかい離していますが、この間に日経平均は1万円台から5万円台まで約5倍に膨らんでおり、各時点におけるかい離の実際の強度をこの図から正確に読み取ることはできません。そこで、かい離の実態をかい離率で計ることとします。

 ただし、ここではかい離率を「偏差値」(*)に規準化します。下図は日経平均と基準相場のかい離率の推移を偏差値で示したグラフです。

(*)偏差値については前回講座で解説していますが、要点は以下の通りです。
全体の平均を50点として、対象とする事象が発生する確率を評点化して普遍的な評価値に変換します。
すなわち、40点から60点の範囲であれば発生確率は67%で、30点から70点の範囲であれば95%、そして20点から80点の間では99.7%となります。ここで、実際の使い方としては100%からこれらの発生確率を差し引いて”発生しない程度”に注目することが多くあります。つまり、70点から30点の範囲から外れる確率は(100-95)で5%となり、さらに70点以上あるいは30点以下の場合はその半分の2.5%で、これは滅多に生じないレアなケースと見做すことができます。同様に80点以上または20点以下であればその発生確率は0.15%以下ということで、これはほぼあり得ない異常な現象ということになります。
ただ、一方で40点から60点の範囲については、これは全体の67%、約3回のうちの2回ということでノーマルな普通の状態とする使い方がよく見られます。

              長期のかい離率(偏差値)の推移(月次終値)
                 ―2002年5月~2025年11月14日―

   

 図では、平均値の50点の黒線を中心に40点と60点を緑線、70点と30点を茶色、80点と20点を赤線でそれぞれ示し、それぞれの発生確率である67%、95%、99.7%の範囲を矢印で印しています。
 最高値を付けた10月31日は75.1点、直近の11月14日の偏差値は71.7点で、発生確率が2.5%以下の滅多に生じないケースであることが分かります。これ以外に70点を超えたのはITバブルの79.1点と他に1回の計4回のケースです。ちなみに、対象期間は2002年5月から2025年11月までの287期で、そのうちの4回ですから確率は1.39%で本来の統計上の知見に合っており、こうした偏差値による相場の発生確率の評価に問題はなさそうです。
 次に、こうした偏差値の特性に基づいて2025年の日次ベースの相場を評価してみましょう。

 
〇2025年の相場の注目はトランプ・ショックではなく直近の高値
 下図は2025年について上の図と同様の体裁で示した日次ベースのかい離率の偏差値の推移です。トランプ・ショック、日経平均の最高値、および直近時について当時の日経平均と偏差値の値を枠内に記しています。なお、図では「標準偏差」の英文である“Deviation Value”を略して「かい離率DV」としています(Domestic Violenceの略ではありません、念のため)。

            2025年のかい離率(偏差値)の推移(日次終値)
             ―2025年1月6日~2025年11月14日―

   

 図で、70点以上の領域を「リスクオン」、30点以下の領域を「リスクオフ」としていますが、これは、偏差値が70点を超えるということは株式相場とファンダメンタルズとのかい離が通常より上方に2.5%以下の範囲にあることで、ほとんどファンダメンタルズでは説明のつかない状態にあり、こうした相場は投資家がそろって楽観的になりリスクを度外視して株式買いに走った結果ということで「リスクオン」と呼ぶことに倣って記したものです。

 また、「リスクオフ」というのは逆に、投資家がむやみに投資リスクに敏感になりリスク資産、すなわち株式市場から退避しようとして株式を投げ売りすることでファンダメンタルズでは説明できないところまで相場が下げる状態を指します。

 図から、トランプ・ショックでは、偏差値は36点で実は通常の変動範囲の下側である40点から若干外れた程度で大騒ぎするほどのことはなかったことが分かります。
 一方、10月末の最高値と11月14日の相場は上の長期グラフでも見たように70点を超え、「リスクオン」の領域に入っており、これは(立派に?)過熱状態(反落の可能性大)にあると見ることができます。

〇日経平均における過熱相場のレベルおよび調整に入った場合の落ち着き先は?
 近時の相場の実態は以上に見た通りですが、こうした偏差値による評価では相場の実感としてはピンと来ないうらみがあります。そこで、偏差値の推移を日経平均に合わせた実際の相場の水準に合わせた指標に置き換えたのが以下のグラフです。

            2025年の日経平均の変動の上限・下限(日次終値)
               ―2025年1月6日~2025年11月14日―

   

 紺色の線が日経平均、青線が基準相場、緑線が偏差値の40から60点相当する通常の変動範囲茶色の線が偏差値の30から70点の範囲から外れリスクオン、あるいはリスクオフに入る境界線を示します。
 日経平均は直近の水準はリスクオンの領域にあり反落の可能性が高いことは避けられない状勢ですが、では、いざ調整の段階になった場合にその落ち着く地点はどのあたりになるでしょうか。
 図から、調整の当面のメドとしては、リスクオン領域の境界である4万9,557円が目安となりそうです。
 そして、その先には通常変動の境界としての4万4,966円が見えてきます。




株式相場を構成する根っこにある動きを読み解くための各種の「基準相場」と「リスク回避指数」等の指標は、当講座の『相場の実相』
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

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