NEW ポートフォリオ戦略実践講座:「長期の相場の大きな流れの中でも変動の上限を超える株式相場:反転下落のリスクは?」  (2025/10/13公開)


≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫

   ー 長期の相場の大きな流れの中でも変動の上限を超える株式相場:反転下落のリスクは? -

 株式相場は10月6日の大幅高を経た後も堅調に高値圏を維持、日経平均は10月9日には最高値の4万8580円を記録し、直近の10月10日でも4万8,088円をつけています。

 9月末の前回講座では日経平均と「基準相場」の動きを短期と長期の両面から対比することで、近時の相場が上げ過ぎの過熱状態か否かを評価しました。
 今回は株式相場がその後さらに一段と上げ足を強めたことで改めて行き過ぎ(上げ過ぎ)の状況を評価してみようというものです。なお、前回は月次ベースの日経平均と基準相場の比較グラフで両指標の推移のみ示しましたが、今回は両指標の比較グラフに短期の推移グラフと同様、日経平均の変動の上限と下限を併せて載せました。

 下図は日経平均と基準相場および日経平均の変動上限と下限を日次ベースで示した短期評価のグラフです。前回の今年初から9月末までの期間を直近の10月10日まで延長しています。

     日経平均と基準相場、および日経平均の上限と下限の推移(日次終値ベース)
             ―2025年1月6日~2025年10月10日―

   

 紺色の線が日経平均、青線が基準相場で赤線が日経平均の変動の限界を示し、期初の1月6日と直近の10月10日の各指標の値は薄赤色の枠内に示しています。また、最高値をつけた10月9日とトランプ関税ショックで急落した4月7日については日経平均と基準相場、そしてご参考として、それぞれの変動限界である上限、下限を赤色と青色の枠内に記しています。

 日経平均が最高値を付けた10月9日には上限を3,300円余り、直近の翌10月10日でも2,500円以上上限を上回っており、日次ベースの短期の相場の状況からは過熱状態、すなわち反転下落の可能性が高いと見られます。

 では、こうした評価はITバブルやリーマン・ショックなど歴史的な相場変動を含む長期の視点から見てみるとどうでしょう。
 下図は2002年5月から2025年10月(10日)までの23年間余りの日経平均と基準相場の月次終値ベースの推移、および日経平均の変動の上限と下限を併せて示したグラフです。
 日経平均の変動の上限と下限は、上の図で見た日次ベースと同様、対象期間の日経平均と基準相場とのかい離を統計的に処理して求めたもので、日次グラフと同様、この限界を超える確率は2.5%以下となります。

       日経平均と基準相場、および日経平均の上限と下限の推移(月次終値ベース)
                ―2002年5月~2025年10月(10日)―

   

 紺色の線が日経平均、青線が基準相場で赤線が日経平均の上限と下限を示します。期初の2002年5月と直近の2025年10月(10日)について日経平均と基準相場、上限と下限を薄赤色の枠内に記しています。また、この間に限界を超えたケースについては紺色ので、限界に接近したケースについては青色のでマークし、それらの事象についてその時期と日経平均の値を上部の白枠内に記しています。
 日経平均が上限を超えたのは(1)ITバブル期と(2)コロナショックからの回復期待時、そして今回の(3)直近期ーーの3回で、下限を下回ったのは(1)バブル崩壊の底値と(2)リーマン・ショックーーの2回です。23年間余り、約280か月で限界を超したのは計5回で発生する確率は2%以下となり、統計的な知見は正しいと言えそうです。なお、下限の限界に近づいたのはコロナショックとロシアによるウクライナ侵略時の2回です。

 ここで、対象期間が23年間と長期に渡り、この間に日経平均の水準は4倍以上になっているため、かい離の程度をそのままの水準で公平には比較できません。そこで、日経平均と基準相場のかい離はかい離率として求めることとします。

 かい離率は以下のように求めます。

かい離率=月次終値ベースの(日経平均/基準相場ー1)*100。

 下図は日経平均と基準相場のかい離率の推移、およびかい離の変動の限界を示したグラフです。

           日経平均と基準相場のかい離率の推移(月次終値ベース)
               ―2002年5月~2025年10月(10日)―

   

 中央の黒線はかい離率の平均値で黒線を挟んで上下にある赤線はかい離率の変動の限界を示します。
 かい離率の平均はプラス0.1%で上側の限界はプラス22.9%、下側の限界はマイナス22.6%です。前回講座より若干平均が高まり、それに伴って上下の限界線もわずかながら上方にシフトしました。図中の紺色の◎と青色の□は上図と同じ限界を超えた事象と限界への接近を示します。
 図から、変動の上限を超えたケースはITバブル期と直近の2回、下限を外れたケースは資産バブル崩壊の底値とリーマン・ショック時底値の2回です。

 ここで、コロナの回復期待時が上図の水準ベースではぎりぎりで上限を超えていますが、かい離率ではやはりぎりぎりで上限の範囲内に収まっています。これはかい離率の値がその計算上、基準相場の動きによって水準同士の比較とは異なることによります。いずれにしてもコロナ回復期の高値は十分な過熱感には至らない状況であったことになります。

 そこで、注目の直近の10月10日時点の状況を見ると、水準ベースで2,573円、かい離率で1.1%上限を超えており、相場は異常と言える上値の状態にあることが否定できません。反転下落のリスクはかなり高いと言えます。

 では、下落に転じた際に最初の段階で調整される水準のメドはどの程度と見ることができるでしょうか。
 ここで過去23年間の相場の動態を折り込んだ統計による知見を活かすと、異常な状態から抜け出す節目となる変動上限の4万5,500円が当面の調整のメドとなります。



当講座でご案内している「基準相場」は当サイト『資産運用のブティック街』のトップページにある無料の「相場の実相を見る」コーナーで「日経平均と基準相場の推移」として毎日更新、公開しています。


日経平均と「基準相場」はその推移を併せて対比できるグラフでご覧いただけます。グラフは短期として約6か月、長期として約3年間の2通りの構成となっています。

相場の裏にある”ファンダメンタルズの実態”を捉える指標としてご活用いただければ幸いです。


なお、「基準相場」の詳しい内容につきましてはこちらの「基準相場とは」を直接ご参照ください。


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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

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