≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫
ー 短期と長期の視点で探る急騰相場の実相:上げ過ぎから反落の可能性は? -
株式相場はトランプ関税という強力な怪獣の出現によって急落、日経平均は4月7日に2,600円余り下げて3万1,136円をつけました。しかし直後に相場は回復から強い上昇局面に入り日経平均は史上最高値圏を推移して、9月25日にはピークの4万5,754円を付けました。
さすがにこの急上昇は行き過ぎだろうという声が上がる一方、上昇ポテンシャルはまだまだあるという強気の見方もあるようです。
そこで、今回は相場とその基礎的条件(ファンダメンタルズ)を短期と長期の両面から対比することで足元の相場水準がどのような状況にあるかを探ります。
当講座では日経平均のファンダメンタルズに基づく、いわば“あるべき日経平均”を「基準相場」と称して計測、公表しており、ここでは基準相場を日経平均のファンダメンタルズとして両者の関係を検証します。短期は今年初から直近の9月26日までの日次の動き、長期は基準相場の計測可能な最古期である2002年5月から直近の2025年9月までの月次終値を対象とします(2025年9月は26日終値を用います)。
短期の相場評価:高値の限界を超え反落の可能性
下の図は今年初から9月26日までの日経平均と基準相場、および日経平均の変動が通常の変動の限界を示す上限と下限の推移について日次ベースで示したグラフです。
日経平均と基準相場、および日経平均の上限と下限の推移(日次終値ベース)
―2025年1月6日~2025年9月26日―

紺色の線が日経平均、青線が基準相場で、日経平均の変動の上限と下限を赤線で示しています。茶色の矢印は限界変動の範囲を示します。
ここで、変動の限界は過去10年間の日次ベースの日経平均と基準相場のかい離の平均幅を統計的に求め(標準偏差と言います)、その2倍の位置となります。すなわち、年初来の日経平均と基準相場との平均的なかい離の2倍の範囲を通常の変動とは言えない異常の状態であると評価することになります。
*一定の前提の下で、この上限と下限を超える確率はそれぞれ2.5%以下となることが統計的に示されています。2.5%とは1年間で6~7回程度の発生ということですから極めて異例なケースと言え、これを変動の限界としました。
さて、日経平均と基準相場との対比でみると、年初の1月6日には日経平均と基準相場とのかい離は約1,000円と比較的小さく、株式相場はほぼファンダメンタルズに近い正常な状況にあったと言えます。その後、4月のトランプ関税声明が発出するまでは相場はこの安定的な状況が続きましたが、トランプ関税による急落から回復した後に急上昇局面に入ったことで相場展開は一変します。こうした相場の地合いの急変を具体的な形で示すのが日経平均の変動限界です。
日経平均はトランプ関税による急落で一気に3万1,136円をつけましたが、これは変動下限の2万9,842円まで1,290円まで接近した低落でした。その後相場は急騰局面に入り日経平均は8月半ば以降、今度はほぼ一貫して変動上限を超える状態で推移しています。そして9月25日に史上最高値の4万5,754円を記録した後、翌直近の26日には400円の下げとなっており、今後の動向が注目されるところです。
こうした動きからは、過去10年間の相場の日次の変動特性からすると、日経平均はやはり上げ過ぎの状況であると言えます。この特異な状況が解消するには日経平均は当面の変動上限である4万3,400円程度をメドに約2,000円程度の調整が必要ということになります。
こうした短期からの状況の見方に対して、過去23年余りの大きな相場の流れの中では日経平均の近時の状況はどのようなものになるでしょうか。次に見ていきましょう。
長期の相場評価:ファンダメンタルズとのかい離が上限の境界に、位置取りは微妙
下図は2002年5月から2025年9月までの月次終値ベースの日経平均と基準相場の推移を示したグラフです。2025年9月は26日終値です。
日経平均と基準相場の推移(月次終値ベース)
―2002年5月~2025年9月(26日)―

紺色の線が日経平均、赤線が基準相場です。期初の2002年5月末と直近の2025年9月26日の日経平均と基準相場の値を薄赤色の枠内に示しています。また、この間に生じた5つの大きな経済的・社会的事件、すなわちリーマン・ショックとアベノミクス開始、コロナ・ショック、ロシアによるウクライナ侵略、そして今回のトランプ関税ショックについてその時点を紺色の四角でマークし当時の日経平均と基準相場の値を白枠内で示しています。
図から、日経平均と基準相場はこれらの大きな相場変動にかかわらずよく連動していることが分かります。これは、株式相場は想定外の突発的事件による大きな変動においても、実はファンダメンタルズによって説明のできる変動であり、つまり相場の形成構造は正当に機能していたことを示しています。
ここで、図に示されたように相場はいずれファンダメンタルズに戻るという相場形成の大原則に従えば、相場がファンダメンタルズから大きくかい離した異常な状態こそが相場反転の可能性が強いことになります。
こうした相場とファンダメンタルズの関係を端的にを示すのが両者のかい離率です。下図は日経平均と基準相場のかい離率{(日経平均/基準相場ー1)*100}の推移です。
日経平均と基準相場のかい離率の推移(月次終値ベース)
―2002年5月~2025年9月(26日)―

図で黒の横線はこの間のかい離率の平均の位置、赤線は上記の日次ベースの日経平均と基準相場の推移の図にある赤線と同様、かい離が通常の変動範囲を超えた変動の限界値を示します。
すなわち、この限界値を超えた場合はかい離は縮小に向かう、つまり相場が反転する可能性が高いことになります。なお、平均はちょうど0%になり(これはかい離の基準である「基準相場」を推計した統計上の特性に基づくものです)、上限は22.6%、下限は―22.6%です。
図から、相場(日経平均)が最もファンダメンタルズ(基準相場)から下側に離れたのは1989年末に資産バブルが破裂した後続いた長い相場下落における底値となる2003年5月につけた位置取りマイナス位置取り30.5%で、下限を大幅に下回っています。逆に最も上側に離れたのはアメリカを発生源とした日本におけるITバブルのピーク時の2006年4月の32.7%です。そしてリーマン・ショック時の2008年10月にも下側の変動限界を下回るマイナス26.6%をつけています。これら歴史的な相場の到達点ではやはり異常事態となっていたことが示されます。
そこで、注目の直近の2025年9月ですが、かい離率は22.4%で上限のギリギリ内側に止まっていることが分かります。何とか通常の変動の枠内に収まっていますが、これはコロナ・ショックの下落から回復した時の高値と同じ水準です。長期の相場の大きな流れの中では足元の日経平均は直ちに反落につながる極端な上げ過ぎの状態には何とか踏みとどまっていると見なせます。
とはいえ、いかにも上限ギリギリの状態で今後の状況は反落のリスクと背中合わせの状態にあると言えそうです。
株式相場を構成する根っこにある動きを読み解くための各種の「基準相場」と「リスク回避指数」等の指標は、当講座の『相場の実相』
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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