ポートフォリオ戦略実践講座:「株式相場は足を踏み入れたリスクオンから抜け出しファンダメンタルズに戻る動き」を公開しました。  (2024/04/03公開)

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≪ ポートフォリオ戦略実践講座 ≫

      ー 株式相場は足を踏み入れたリスクオンから抜け出しファンダメンタルズに戻る動き -

 株式相場は2024年初から急騰し、日経平均は同年2月22日に3万9,098円を付け1989年末に付けた高値、3万8,957円を34年振りに更新、次いで3月4日には初の4万円台に達し、同22日には最高値4万888円を記録しました。2023年末の3万3,464円から3か月間で7,424円、22%の上昇になります。
 さすがにこの上昇ペースは速すぎるということで、バブルではないかという声がある一方、典型的なバブルだった1989年末時点とは企業収益をはじめ状況が全く違い、バブルとは言えないという指摘があります。

 果たして足元の4万円近辺の日経平均は妥当な水準にあると言えるのでしょうか。今回は日経平均の相場位置を本来のあるべき姿を示すファンダメンタルズと対比することでその妥当性を見ていきます。
 ファンダメンタルズに基づく日経平均は当講座で「基準相場」(*1)としてご紹介しておりますが、当指標は個人投資家を対象とした投資学習サイト、「資産運用のブティック」内の「相場の実相を見る」コーナーで毎日計測、公開しています。ご興味がおありの場合はぜひご一覧ください。
(*1)「基準相場」についてはこちらでご案内しています。

 下図は日経平均と基準相場について2023年末から直近の2024年4月1日までの推移を日次ベースで示したグラフです。

               日経平均と基準相場の推移(日次ベース)
              ―2023年12月29日~2024年4月1日―

   

 紺色の線が日経平均、赤線が「基準相場」です。図で期初の2023年末と直近の2024年4月2日、および高値を付けた3月22日における日経平均と基準相場の値を記しています。

 期初の2023年末では両者はほぼ一致しており、株式相場はファンダメンタルズに見合う安定した状況であったことが分かります。それが今年初から日経平均が上げ足を速める半面、ファンダメンタルズを示す基準相場は緩やかな上昇に止まっており、日経平均が高値を付けた3月22日には2つの指標の差は7,400円余り、22%にまで拡がりました。
 相場とファンダメンタルズがここまでかい離すればどうしても相場は不安定になります。日経平均が4万円に達したころから変動が荒っぽくなり、高値を付けた後は弱含みの状況となっています。3月以降の相場はバブルとは言えなくても上げ過ぎ状態とは言えるかもしれません。

 こうした状況を明快に読み解く指標として、当講座では「リスク回避指数」(*2)を開発、上記の「相場の実相を見る」コーナーで基準相場と合わせて公開しています。
(*2)「リスク回避指数」について詳しくはこちらをご覧ください。

 この指標は相場とファンダメンタルズとのかい離は投資家が実感する市場リスクの大きさによってもたされるとして構成したもので、その市場リスクの大きさを数値で表します。
 市場リスクが極めて大きい場合は投資家は株式市場から退避、すなわち株式をこぞって売ることで相場はファンダメンタルズで説明のつかないほど下落しますし、逆に市場リスクが十分に低い場合は投資家は高いリターンを目指して株式を買いまくることで相場はファンダメンタルズで説明のつかないほど上昇します。
 前者の下げ過ぎの状態はリスクオフ、後者の上げ過ぎの状態はリスクオンと呼ばれますが、当指標はこのリスクオフ、リスクオンの状態を試験の成績評価でおなじみの“偏差値”に規準化して表示します。

 すなわち、指数が50点であれば市場リスクはちょうど中立の位置にあり、50点を挟んで40点から60点の間であれば市場リスクは通常の変動の範囲にあり穏やかな状態、そして70点以上であれば市場リスクは十分に高く相場はリスクオフの下げ過ぎ状態のあり、見方を変えると反転上昇の可能性が高いことを示し、30点以下であれば市場リスクは十分低く相場はリスクオンの上げ過ぎ状態で、これは反落の可能性が高いことにつながります。

 下図は上の図と同じ2023年末から直近までの「リスク回避指数」の推移を示すグラフです。

              「リスク回避指数」の推移(日次ベース)
              ―2023年12月29日~2024年4月1日―

   

 図で黒色の横線が50点の位置を、黒線を挟んだ上下にある緑線が通常のリスクの変動範囲を示す60点と40点、下側の赤線がリスクオンの境界線である30点を示します。
 期初の2023年末で指数は50.53と市場リスクはちょうど中立の状態で相場は安定状態であったのが、その後に貫して低下、日経平均が高値を付けた3月22日には29.59と30点を割り込み相場はリスクオンの領域に足を踏み入れました。
 しかし、極端な低位であるリスクオンの領域にやはり長居はできず、直後に通常リスクの範囲である40点に向かって上昇傾向を辿っています。直近では35.07と上げ過ぎ状態からの脱出が一服した形です。
 相場は高所の不安感は薄れてきたことで、今後はファンダメンタルズ、その中核要素である企業業績の動向に注目することが肝要と言えそうです。


*当講座についてのご意見、ご質問等ございましたら以下までご一報いただければ幸いです。
higurashi@iisbcam.co.jp


(*)ご注意
投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。
当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。
当講座を基に行った投資の結果について筆者及びインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。


講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

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IIS
(有)インテリジェント・インフォメーション・サービス

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