F.マネージャーの視点/銘柄選定とその背景:「EPSその変化率と持続性を尊重:トヨタ、日立、花王で検証」を公開しました。  (2021/12/09公開)

Pocket



<『応用編・講座』>
「応用編・講座」の「F.マネージャーの視点/銘柄選定とその背景」で新講座を公開しました。

ー EPSその変化率と持続性を尊重:トヨタ、日立、花王で検証 -

 米国の長期金利日米為替レートが大きく変動しなければ外国人投資家にとってのマクロ面での投資環境は変わらず(前稿をご参照ください)、そこからはミクロファンダメンタル、つまり企業の業績動向がポイントとなります。
 そこで外国人投資家によって株価が強く影響を受ける代表的な銘柄、トヨタ、日立、花王の3銘柄について過去9年間の株価と業績(EPS、1株当たり利益)の推移を示します。株価は2012年の3月を1とします。

      トヨタ、日立、花王の3か月ごとの株価の推移(2012年3月=1)
             ー2012年3月~2021年9月ー

   

 

           3銘柄のEPS(1株当たり利益)の推移(赤字は最高値)
                ー2013年~2022年ー

   

トヨタ、日立は3月決算、花王は12月決算。2021年はそれぞれ決算値、予想値、トヨタのEPSは分割後の修正値。

 当該期間中、三銘柄を継続して保有していたとすれば(個人投資家にはありそうです)、株価は2~4倍程度になっているので銘柄選択の失敗観はないと思われます。また、この間の受け取り配当金額も重要な要素になっていると思われます。
 機関投資家には9年間も継続保有することは到底許されません。現在の委託期間は1年を前提とした成績を見ながら継続するか解約するかの判断が大きな流れのようです。

 外国の金融機関は一般的に12月締めが多く、それを意識した動きが11月~12月に表れやすい時期と言えるでしょう。ファンドマネジャーは翌期への継続を前提に翌年1月以降の銘柄を意識して行動を始めるかしれません。
 その為の銘柄の入れ替え作業が秋口には始まっている可能性もあるでしょう。問題は、そうした投資行動をとる外国人投資家の東京市場における株価形成の影響力が強いという事です。
 わずか三例ですが過去の株価の動きを当該企業の業績と関連付けてみることにしましょう。見方のポイントを筆者の経験に基づき集約すると次の二点となります。

  〇変化率の大きさ・・・対前年比大きければ大きいほど株価反応度は高い。
  〇利益水準の持続性・・・最高水準を記録後、その水準を更新しないと株価は減速。

 その前提で株価の動きをチェックすると、

花王:2018年3月に314円の最高を記録、それまでの数年間に比べ約3倍の伸びです。株価は急上昇しましたが問題はその後です。その後も高いレベルのEPSを実現しておりますが、株価のそこからの上昇にはそれ以上のEPSレベルが必要です。つまりEPSが最高値を更新し続けないと株価はスローダウンするという教訓です。

日立:2014年3月期の最高水準から低下を続け2020年3月に最低水準に達します。そして、2021年3月期から急上昇が始まります。株価は反応しました。この勢いをキープするにはEPSの高値圏更新の連続性が必要です。実現できなければ、花王と同じような株価になる可能性があります。

トヨタ:EPSに大きな変化が生じないのが最大の特徴です。利益が微増ながら持続的に上昇する動きが継続すれば、その前提を踏まえてPBR1(株価が1株当たり純資産と同レベルになる水準)にプレミアムが乗る形、例えば、PBR1.2さらには1.4といった形での株価期待です。現在はその状況です

 いずれにしても、外国人投資家はEPSの変化率そして持続性の動きを投資判断の第一の拠り所として当該銘柄の購入、保有、売却の行動を起こします。


【当コラムは本講座の抄訳です。外国人投資家の習性および各銘柄についての詳しい内容は本講座をご覧下さい。】



当サイト、『資産運用のブティック街』が他の講座より優れているとされる特長こちらのユーチューブでまとめて紹介されています。ご一覧をお勧めします。


≪お知らせ≫ 
時節柄、ご家庭で過ごす時間が増えていると推察され、この度、ご家庭で”投資の王道”を身につけていただけるよう「家庭で学ぶ投資の王道・ワンピース講座」ユーチューブで公開することになりました。
今回は「客観的根拠に基づいた“正当な日経平均”を決定。」 と題する第3回をこちらで公開いたしました。当コラム読者の方に投資の地力向上の一助にしていただきたく、よろしくご一読ください。



*ご注意:本講座は会員向けの「応用編・講座」に収録されます。ご覧になるためには会員登録が必要となりますが、会員登録した当月中は無料で全ての情報、機能をご利用いただけます。お気軽にお試しください。(退会の手続きはトップページの「退会手続き」の窓から行えます)。


講師:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」など。

—————————————————————————————
IIS
(有)インテリジェント・インフォメーション・サービス

お問い合わせは以下までお願いいたします。
info@iisbcam.co.jp
—————————————————————————————