特別版:理論株価と市場リスクで読む相場の実勢:「リスクオフの境界で気迷う株式市場」フル版で紹介。  (2019/05/17公開)

『 理論株価と市場リスクで読む相場の実勢』コーナー
「リスクオフの境界で気迷う株式市場」を公開しました。今回は特別版としてフル版でご紹介します。

 株式相場は不安定な動きを続けています。日経平均は10日間の大型連休の前に高値を付けた後、下落に転じ連休明けに下げ足を強めました。トランプ米大統領の中国に対する関税の大幅引き引き上げの実施、そしてそれに対する中国の報復措置への言及を機にそれまでの米中間の“貿易摩擦”がいよいよ“貿易戦争”に変わって世界経済への影響が本格化するという懸念から市場リスクが一気に高まったためとみられます。
 以下でこうした不穏な相場の動きとその裏にある市場リスクの変動の実態を見ることで今後の相場見通しの参考にしていただければと思います。

 下図は昨年10月の高値を含む2018年9月から直近の2019年5月16日までを対象に、日経平均と理論株価、および理論株価との対比で得られる日経平均の通常の変動範囲、そして相場の下げ過ぎを示す変動の下限の推移を示すグラフです。

   日経平均と理論株価および通常変動の上側と下側、変動の下限の推移
                 ―2018.9.3~2019.5.16―

投資の視点201905A

 紺色の線が日経平均、青線が理論株価、緑線が日経平均の通常変動の上側と下側、赤線が変動の下限を示します。
 日経平均は昨年10月に高値を付けた後反落し11月に通常変動の下側を割り込んで以来、本年5月半ばまで継続して通常変動の下側を下回っていますが、半年以上に渡って、通常変動の範囲を超えるケースは異例と言えます。特に年末にかけて一段と下げを加速して12月25日には1万9,100円台まで下落、変動の下限も下回りました。
 さすがにこの急落の後は反発に転じ、連休前の4月25日には底値を付けた後の高値2万2,307円をつけ通常変動の領域にあと一歩のところまで迫りましたがその後、連休中に生じたトランプ氏の強硬姿勢等によって連休明けに再び下げ足を速め直近の5月16日には2万1,000円そこそこの水準となっています。

 一方、この間の理論株価は為替相場の安定と堅実に推移する業績を背景に一貫して2万3,000円台で安定した動きを続けており、相場の不安定な動きはファンダメンタルズの変化ではなく専ら市場リスクの変動によってもたらされていることが分かります。
 こうしたファンダメンタルズで説明できない株式相場の下落は市場リスクの高まりによって投資家がリスク資産の株式から安全資産へ資金を移した結果、つまりリスク回避志向が高まった結果と見ることができます。こうした投資家がリスクを回避することによって生じる株式相場全体の下落を「リスクオフ」と言います。

 当講座ではこうした状況を客観的な数値で示すため、日経平均とファンダメンタルズに基づく指標である理論株価とのかい離を “偏差値(*)”に規準化することで分かり易い指標として開発しました。この指標は本来の意味からは「市場リスク基準指数」とも言うべきものですが、より直観的に分かり易い名前として「リスク回避指数」と呼ぶこととします。

(*)偏差値
偏差値は大学などの入学難易度を示す指標として使われることで知られていますが、実体は全体の成績を、平均を50点として分布の状態を折り込んだ評点のシステムで成績の出来、不出来を客観的に分かり易く示す指標です。平均の50点を挟んだ40点から60点の間には全体の68%が入り、平均的な成績の範疇であることを示します。30点から70点の範囲に広げると全体の95%が入り、逆に言うとこの範囲から外れる確率は全体の5%でこれはかなり特別な成績と言えます。
 ここで、当講座ではリスク回避指数が70点を超えて高まった場合は、市場リスクは通常の範囲を超えた高い状況であり、この状況では投資家はリスク回避に走る、すなわち「リスクオフ」の状態にあるとします。逆に30点を下回った場合は市場リスクは十分に低く、投資家はリスク選好に偏る状況にあるとして「リスクオン」の状態にあるとします。さらに、その外側となる20点と80点の間には全体の99.7%が収まりここから外れる確率は0.3%になります。この領域はほとんど表れない特異な状況で、それぞれ「極端なリスクオフ」、「極端なリスクオン」としています。
リスク回避指数について詳しい内容については以下までお問い合わせください。
< info@iisbcam.co.jp >

 以下は上図と同期間における「リスク回避指数」の推移を示すグラフです。

                    リスク回避指数の推移
                    ―2018.9.3~2019.5.16―

投資の視点201905B

 上図で黒線が平均の50点、黒線を挟んで上下にある緑線が40点と60点で通常リスクの範囲、その外側にある薄い赤線が「リスクオン」と「リスクオフ」の境界を示します。さらに図の上部にある赤線は80点の位地で極端なリスクオフの境界となります。

 リスク回避指数は昨年12月の相場急落局面で25日には過去最高水準である86.33となり「極端なリスクオフ」の領域まで入りましたが、さすがにこの異常状態はすぐに脱し徐々にリスクは低下していきます。2月からは通常リススクの上側とリスクオフの領域の間でそれなりに落ち着いた状況が続きました。そして、4月半ばには通常変動の領域にまであと一歩というところまでリスク回避志向が薄まったところで米中間の軋轢を主因に再び反転上昇して現在の70点レベルに至っています。

 足元の状況はリスクオフの境界である70点を前にして気迷っているように見えます。今後、リスクオフの領域に入り市場からの資金流出が勢いを増す(相場が低迷)のか、通常リスクの範囲に戻り資金流出の勢いがそがれる(相場の回復)方向に向かうのか、米中の対応を初め英国のEU離脱問題、イランの核問題、また北朝鮮の動向など様々なリスク要因の動きが注目されます。一方、更新中の今期業績見通しは決して悪くない、という状況があり、これが足元の気迷い状態の大きな要因のひとつとなっていると言えそうです。

(*)理論株価、通常変動の上側と下側、その他の相場判断のための指標は当サイトの「理論株価で測る相場の位置づけ」の会員限定版で毎日更新、公開しています。会員登録した当月は会費はかかりません。お気軽にお試しください。
<今回は特別版として本講座と同等の内容でご紹介しました。>

通常の本講座は会員向けの「理論株価と市場リスクで読む相場の実勢」に収録されます。ご覧になるためには会員登録が必要となりますが、会員登録した当月中は無料で全ての情報、機能をご利用いただけます。お気軽にお試しください。(退会の手続きはトップページの「退会手続き」の窓から行えます)。

講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。

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IIS
(有)インテリジェント・インフォメーション・サービス

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