理論株価で相場評価:「日経平均は「変動の上限」にぶつかって反転、当面は“注意領域”で安定か」  (2017/12/03公開)

============  「理論株価で測る相場の位置づけ」  ==========

           ― 日経平均は「変動の上限」にぶつかって反転、当面は“注意領域”で安定か ー 


 株式相場は8月から9月にかけて下げた後、9月8日に底を打ち上昇局面に入りました。背景には市場リスクが一服(客観情勢に大きな変化はなく危機なれ?)したことと堅調に続く業績の改善があります。
 下図は、7月初めから直近の12月1日までの日経平均、理論株価と通常変動の上側、変動の上限を示したグラフです。
 
       日経平均、理論株価と通常変動の上側、変動の上限(日次終値)
                  ―2017.7.3~2017.12.1―

株価201711201A

 紺色の線が日経平均、青線が理論株価、緑線が通常変動の上側、赤線が変動の上限を示します。
 日経平均は8月初めまで理論株価、すなわちファンダメンタルズに沿った水準で推移した後、市場リスクの高まりから理論株価を下離れました。ほぼ1カ月下落を続け9月8日に底を打った後上昇に転じ、理論株価と通常変動の上側をごぼう抜きで追い越し11月7日には変動の上限に達しました。
 変動の上限はそれ以上は過熱域に入る高値境界のメドになりますが、今回はそこで反転し、通常変動の上側と変動上限の間でジグザグ運動に入っています。足元、過熱状態ではないものの、ファンダメンタルズから見てやや上値に注意を要する領域に居ると言えます。
 この9月の底値から直近の12月1日までの2か月余りの日経平均の上昇幅は3,500円超、上昇率は約18%となり、この急激な上昇は一般には過熱状態と言えますが、この間に今期業績予想が着実に改善したことによるファンダメンタルズの裏付けによって理論株価、そして変動の上限が上方にシフトしたことで過熱状態を免れた形です。ちなみに同期間に日経平均ベースの予想1株当たり利益は166円から182円まで約10%上昇しています。

 こうした堅調なファンダメンタルズの下では今後の相場のカギを握るのは市場リスクの動向ということになります。
なお、市場リスクはこれまで説明してきましたように、「資本コスト」という、投資家が株式投資によって負うリスクに見合って要求するリターンをリスクに置き換えて読むこととしてきましたが、今回より、リスクをカバーする割り増しのリターン」という意味をより直接表すように「市場リスク・プレミアム」と呼ぶこととします。ただし、文中では煩雑さを避けるため従来通り「市場リスク」と表記します。

 下図は上と同期間についての市場リスク・プレミアムの推移を示すグラフです。

                 市場リスク・プレミアムの推移
                   ―2017.7.3~2017.12.1―

株価20171201B

 市場リスクは8月初めまで通常変動の上側の水準で安定的に推移してきましたが、以降、上離れして上昇し9月8日をピークに下落に転じています。市場が妥当なリスク水準と認める「標準リスク」まで低下した後、11月7日に底打ちしその後は上昇、下落の不安定な動きを続けています。
 ここでのピークと底打ちのパターンはちょうど日経平均と逆になっていることが分かります。市場リスクはファンダメンタルズで説明できない実際の相場の動きを説明する要素として位置づけられるので、ピークと底打ちの逆転現象はその特性をよく表していると言えます。
 下図はこうした市場リスクの本来の意味をより直接的に捉えるグラフです。青線が市場リスクを表し、赤線は日経平均とファンダメンタルズに対応する株価水準を示す理論株価とのかい離、すなわち、実際の相場水準とファンダメンタルズとの格差を表します。

       市場リスク・プレミアムと日経平均・理論株価のかい離の推移
                   ―2017.7.3~2017.12.1―

株価20171201C

 図から、かい離と市場リスクがきれいに逆相関の動きを見せていることが分かります。
 図の左上にある「相関係数」はやや専門的になり恐縮ですが、2つの指標間の相関の程度を示す指標です。値が1であれば完全に同じ方向に変動することを、ゼロであれば全く連動しないことを、-1であれば完全に逆に変動することを示します。ここでは、-0.940ということで、極めて高度に逆方向に変動することを示しています。

 足許、業績が高水準で安定し、為替市場が落ち着いた動きを続けるとすると、今後の相場動向は市場リスクに左右されると言ってもよさそうです。市場リスクは足元、不安定な動きを見せていますが、当面、標準リスクと通常変動の上側の間で収まるとすれば日経平均は変動の上限(2万3,100円)と通常変動の上側(2万2,200円)の範囲で推移しそうです。

(*)理論株価、通常変動の上側、その他の相場判断のための指標は当サイトの「理論株価で測る相場の位置づけ」の会員限定版で毎日更新、公開しています。会員登録した当月は会費はかかりません。お気軽にお試しください。

講師プロフィール:日暮  昭

日本経済新聞社においてポートフォリオ分析システム、年金運用評価システム、各種の日経株価指数の開発を担当。2004~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。

(*)ご注意
投資判断はご自身で行ってくださるようお願いいたします。当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。
当講座を基に行った投資の結果について筆者とインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。

無断で当講座の転載を禁じます。
(有)インテリジェント・インフォメーション・サービス