理論株価で相場評価:「特別編:理論株価でシナリオ分析―日経平均2万円到達の条件は?」  (2017/01/31公開)

============  「理論株価で測る相場の位置づけ」  ==========

               ― 理論株価でシナリオ分析―日経平均2万円到達の条件は? ー 

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今週は会員限定の「地力養成講座」で当講座の主旨に合う、理論株価に基づく日経平均のシナリオ分析を取り上げましたので、特別編としてこれと同等の講座を当講座で公開いたします。
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2016年の株式相場は「不安定期」、「安定期」、「上昇期」で区分
 下図は波乱が続いた昨2016年の日経平均の推移を理論株価(*)と併せて直近の2017年1月27日まで日次ベースで示したグラフです。紺色が日経平均、青色の線が理論株価を示します。

            日経平均と理論株価の推移(日次終値)
               ―2016.1.4~2017.1.27―

日暮201701A


 図から2016年の日経平均の動きは大きく3つのフレーズ、すなわち理論株価を経常的に下回りながら波乱が続いた「不安定期」、理論株価と一体で推移しファンダメンタルズに沿った動きを続けた「安定期」、そして理論株価を継続的に上回る「上昇期」――に分けられることが分かります。不安定期は年初から英国のEU離脱を経て8月半ばまで、安定期は11月9日のトランプ・ショック後の急反発まで、上昇期はそれ以降、現在までとなります。
 図中の(1)から(4)の番号は特に大きく下落した4回の急落場面を示します。

(1)1月21日:中国を初め新興国の経済減速を懸念。
(2)2月12日:同上。
(3)6月24日:英国のEU離脱ショック。
(4)11月19日:トランプ候補の逆襲勝利によるトランプ・ショック。

 4回の急落のうち3回が理論株価を下回る状態で生じていますが、これは日経平均(実際の相場)が理論株価(ファンダメンタルズ)を下回る時期には市場に不安心理が高まっている証しでもあるわけで、ひとつのきっかけで実体以上に下げる傾向が如実に示された結果と言えます。

理論株価との対比で相場変動の構造を読み解く
 下図はこうした相場変動の特徴を掘り下げて評価するグラフです。
 図が立て込んで恐縮ですが上の図に日経平均の「通常の変動範囲」を示す境界線を理論株価の上側と下側に加えたグラフです。境界線は赤線で示しています。
 「通常の変動範囲」は日経平均と理論株価との平均的なかい離の程度を基に規定します。詳細は省きますが、日経平均がこの範囲を超えると通常の変動を超えたということで反転する可能性が高まることを示します。

       日経平均、理論株価と通常変動の上側と下側の推移(日次終値)
                  ―2016.1.4~2017.1.27―

日暮201701B


 図から以下の特徴が読み取れます。
1.(1)、(2)、(3)の急落後に相場は急反発。
反発の可能性が高まる通常変動の下側を大幅に超えたことで反転エネルギーが限界点まで高まり日経平均は急反発。相場反転のメドとしての有効性を再確認するケースとなっています。
2.(4)の急落は理論株価に沿ったもので異常事態の発生とは一線を画す。
トランプ・ショックによる急落は実は急激な円高に伴う理論株価の急落に沿ったもので、相場はファンダメンタルズに対応しているという意味で安定を維持していると言えます。
3.トランプ・ショック後のラリーは理論株価から通常変動の上側への水準シフト。
トランプラリーによって日経平均は理論株価から通常変動の上側にシフトし、それ以降はこの境界に沿った動きを続けています。市場の強気がファンダメンタルズの水準から一段階上の境界まで相場を押し上げたものの、そこを超える力まではなかったことを示します。

日経平均2万円到達のシナリオは?
 米国のトランプ新大統領の登場は世界経済の波乱要因になり兼ねないとの危惧をもって迎えられましたが、これまでのところ日米など先進国の株式相場は堅調に推移しています。とは言え

、「米国第一」を旗印に入国制限を強行するなど荒っぽい施策には危うさが伴い先行きの不透明感は否定できません。
 こうした状況の下、足元の為替、業績の細かい動きとは離れて少し長いスタンスで今後の投資環境が変わった場合に日経平均はどうなるかを見てみましょう。理論株価に基づいて中期的に条件が変化するシナリオを想定し探ってみました。ここでは一つのメドとして日経平均が2万円に到達する条件を見ることとします。

理論株価の決定式(*)は以下の通りです。

理論株価=-3,756+74.1*日経平均ベースの予想1株当たり利益(EPS)+103.1*米ドルレート

 足元の日経平均ベースの予想EPSは137円08銭、米ドルレートは115円ちょうどです。これに見合う理論株価は上記の1万8,260円となります(各係数は丸めてあるため上式に当てはめた場合と若干の

誤差が生じます)。
 この2つの株価の決定要因が変わった場合の理論株価の水準をまとめたのが下の一覧表です。米ドルは足元の115円と120円のケース、予想EPSは足元の137円と145円から5円刻みで増益幅が拡がる4つのケースで併せて8つのケースを想定します。

         シナリオ分析で見る日経平均の水準
日暮201701cc

 緑色のセルが日経平均が2万円となるケースです。
 米ドルレートが120円まで上昇する一方、予想EPSが155円、すなわち足元の予想から13%程度増益幅が膨らむことが日経平均が2万円に達する条件となります。
 米国の金利上昇によってドル高が後押しされ、為替差益を享受する一方で景気が底堅く推移することで企業業績が予想を上回る増益となることが2万円到達のシナリオになります。容易ではありませんが、可能性を否定するほどではなさそうです。

 なお、現在の日経平均に近いのは黄色の箇所、1万9,363円になります。これは米ドレートが120円、予想EPSが145円のケースに相当しており、市場は足元で為替は5円の円安、業績は5%程度の上方修正を見込んでいることがうかがえます。
 トランプ大統領の登場という世界経済にとって大きな不確定要因が表れた現在、客観的な根拠に基づく相場見通しの道具として理論株価を活用されてはいかがでしょうか。

(*)理論株価の基本的な考え方、推計の方法など詳しくは当サイトの「理論株価とは」をご参照ください。



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当コラムの基である「理論株価で測る相場の位置づけ」は以下のグラフと数表で構成され、日次ベースで更新、会員向けに公開しております。

グラフ1:「日経平均と理論株価の推移」
 出力期間:2015年1月5日~直近日
 日経平均と理論株価の推移を示す最も基本となるグラフです。

グラフ2:「かい離率の推移と変動範囲の上限・下限」
 出力期間:2015年1月5日~直近日)
 日経平均と理論株価のかい離の推移を時系列で示します。相場反転の直接の判断材料となります。

グラフ3:「日経平均と変動範囲の上限・下限」
 出力期間:2015年1月5日~直近日
 上記のかい離率を日経平均と同じ水準に引き直したグラフで相場反転の株価の位置を日経平均との比較で直接捉えることが出来ます。

グラフ4:「日経平均と変動範囲の上限・下限―-拡大グラフ」
 出力期間:2016年1月6日~直近日
 上のグラフの出力期間を期近まで絞ることでグラフを拡大、より詳細に反転のタイミングを捉えることができます。

数表  :「直近5日間の日経平均と変動の範囲・かい離率」
 出力期間:直近5営業日
 日経平均と通常の変動範囲、および反転のメドとなる変動の限界を直近の5営業日について数値で示します。

これらのグラフと数表をご覧になるには会員登録が必要ですが登録した月内に退会手続きをすることで会費はかかりません。お気軽にお試しください。

講師プロフィール:日暮  昭

日本経済新聞社においてポートフォリオ分析システム、年金運用評価システム、各種の日経株価指数の開発を担当。2004~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。

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