<『サイト学習コース』>
「投資の地力養成講座」の「ポートフォリオ戦略実践講座」で新講座を公開しました。
ー ファンダメンタルズ・シナリオで占う日経平均 -
日経平均は7月18日に422円の急落をした翌19日は420円高の急上昇を見せるなど、株式相場は相変わらず不安定な動きが続いています。
しかし、一方で株式相場の土台となるファンダメンタルズは堅調に推移しています。
こうした一見、分かりにくい相場模様の時こそしっかりとしした根拠に基づく相場見通しが望まれます。
今回は、7月12日の当講座でご案内しました再推計によって精度が向上したファンダメンタルズに見合う日経平均の水準を示す「理論株価」を用いて外部環境の変化によって日経平均の姿をシナリオ分析によって探ります・
理論株価の再推計の結果は以下の通りでした。
理論株価=―3,819.38+70.87*【予想EPS】+106.19*【米ドルレート】
下図は上の式で得られる理論株価と日経平均の月次終値を推計期間である2002年5月から2019年6月に、直近の7月(19日終値)を加えて示したグラフです。
日経平均と理論株価の推移(月末終値)
―2002.5~2019.7(2019年7月は19日終値)ー
日経平均は青線、理論株価は赤線で、全体としてよく連動しており予想EPSと米ドルで捉えるファンダメンタルズが日経平均の動きをよく説明することが分かります。
その中で、2003年4月、2007年5月、2008年10月、2009年9月、2018年12月の5回に両者が比較的大きくかい離しているのが目立ちます。これは、それぞれITバブルの反動安、米国のサブプライム・ブームのつれ高、リーマン・ショックの急落とその後の反動高、そして米中間の貿易戦争に端を発した世界経済不安懸念による急落です。
下図はこれらのかい離が通常の状態と異なることを示すグラフです。図の中央の茶色の横線はこの間のかい離の平均、これを挟んで上下にある赤線はかい離の変動の平均の位置を示します。上記の5回はいずれもこの平均変動を外れたケースで、これを丸印でマークしています。
日経平均と理論株価のかい離の推移(月末値)
―2002.5~2019.7(2019年7月は19日終値)ー
過去17年余りで日経平均と理論株価が一定の範囲(平均変動)を超えてかい離するのは、リーマン・ショックや米中間の貿易戦争など世界規模の経済面、金融面での大事件の発生時に限ると言えます。
逆に言うと、こうした異常事態が生じない時は株式相場はファンダメンタルズによって捉えられることになります。すなわち、「理論株価」が日経平均の妥当な水準のメドを示すことができると言えます。
そこで、以下で、ファンダメンタルズの要素である業績と為替相場、すなわち、日経平均ベースの予想EPSと米ドルレートの今後の動向によって日経平均がどのような水準になるのかをいくつかのシナリオの下で試算しました。
シナリオは現状の、予想EPSの216円19銭、米ドルの107円50銭を基準に以下の楽観と悲観のそれぞれ3通りを設定します。
<楽観ケース:業績が向上、為替市場が米ドル高(円安)>
1.やや楽観 予想EPS:220円、米ドル:110円
2.通常楽観 予想EPS:230円、米ドル:115円
3.強い楽観 予想EPS:240円、米ドル:120円
<悲観ケース:業績が悪化、為替市場が米ドル安(円高)>
1.やや悲観 予想EPS:210円、米ドル:105円
2.通常悲観 予想EPS:200円、米ドル:100円
3.強い悲観 予想EPS:190円、米ドル:90円
これら6つのケースに対応する理論株価(日経平均の妥当な水準)は以下の一覧表の通りです。
今後業績が240円まで11%程度の増益改善となり、かつ米ドルが120円まで高くなる最も楽観的なケースでは日経平均は2万5,000円を上回る水準まで上昇し、逆に業績が190円まで10%を超える減益となり米ドルも90円程度まで安くなる最も悲観的なケースでは日経平均は1万9,000円そこそこまで下落する形になります。
実際にはファンダメンタルズの変化はこれら両端のケースの間に収まると思われますが、こうしたファンダメンタルズの変化によって相場、日経平均がどの程度の水準に向かうのかというメドをつけておくことは投資の心構えとして有益と思われます。ご参考にしていただければ幸いです。
なお、直近の7月19日の予想EPSと米ドルに対応する理論株価は2万2,917円で、実際の日経平均は2万1,467円と理論株価を1,500円程下回っています。これは市場が、業績、為替市場が近い将来に若干悪化すると慎重に見ていることを示しています。
ちなみにこの日経平均の水準、2万1,467円に対応する予想EPSと米ドルの組み合わせの一例を上表の下段に”ご参考”として記しています。
市場は、米ドルは100円まで7円程度下落、予想EPSは208円まで4%ほど悪化すると見ていることになります。
詳しい内容は本講座をご覧下さい。
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講師:日暮昭
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を駆使した客観的な投資判断のための分析を得意とする。
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